ふたりの娘。二匹のメス猫。そして発達障害気味の夫。帆の街での「ごく普通の家族」のごく普通の一日はきょうもボチボチと暮れていきます。

The concert

「The concert」という映画を観てきました。

 ずっと気になって見に行きたいと思っていたんだけど、オークランドではこの手の映画を上映する映画館は2ヵ所だけ。できれば料金が安い火曜日に行きたい(なぜかどこの映画館も火曜日だけは10ドル。他の日は15ドルくらいかな)、子供たちが学校に行っている間の昼間がいい、などと思っていたら、なかなかチャンスがなくて、とうとう2館のうちの1館は上映終了、残る1館も明日が最終日で、しかも今日も明日も上映は1時からの1回のみ。2時間の映画だから1時からでは次女の学校のお迎えに間に合わない。あきらめようかとも思ったけど、それもくやしい。そこでJBが機嫌のいいときを見計らって「お願いがあるんだけどぉ」とやって、学校へのお迎えに行ってもらうことに成功しました。

 
さて、これほどまでの努力(?)をして見に行った映画ですが、正直、前半は退屈しました。
 ボリショイ楽団のマエストロだった主人公アンドレイは30年前、ブレジネフ政権がユダヤ人を迫害した際、楽団のユダヤ人メンバーの追放に反対して自身も職を追われ、今ではボリショイ劇場の掃除夫。それが、パリの劇場からのボリショイ楽団への演奏依頼のファックスを見て、とんでもないことを思いつきます。かつて自分とともに楽団を追われた仲間たちを集め、偽ボリショイ楽団を結成して、パリで公演をやってしまおうという奇想天外。話の発端からしてこの無茶苦茶ぶりなんだから、思い切ってドタバタのメチャクチャでもよかったんじゃないか、なんて気もするんですけど。
 アンドレイが集めた仲間たちは、パリへの飛行機の中で酒を飲んでべろんべろんになり、ホテルに着くやギャラを今すぐキャッシュで払えと騒ぎ、翌日はリハーサルなどほったらかしでバイトに精を出し……。ロシア人をこんなにがさつに描いちゃって、大丈夫なの? と不安になって、笑えない。あれはやっぱり笑うシーンだったの? 笑いのセンスが微妙にずれている感じ。アメリカ映画とは決定的に違う。(ちなみにこれはフランス映画。前半はほとんどがロシア語、後半はフランス語。英語の字幕を見るのが結構大変でした)

 でも、アンドレイが若いフランス人バイオリニストに「自分はヒーローではない。エゴイストだ」と語るあたりから、アンドレイがなぜこんな無茶をしてまでパリに来たいと思ったのか、演奏曲目をチャイコフスキーのコンチェルトにこだわったのはなぜなのか、その辺のところがとても面白くなってきます。
 クライマックスのコンサートのシーンでは涙がじわじわ〜。演奏に重なるアンドレイのモノローグと回想シーンで、謎が解けていきます。雪の降りしきる収容所で、そこにはない想像のバイオリンを夢中で弾くユダヤ人バイオリニスト。泣けます。
 
 ブレジネフ政権時代のソビエトでユダヤ人迫害があったことなど知りませんでした。先日のトルストイといい、私は知らないことが多すぎますねぇ。映画を見るたびにちょっとずつ知識が増えていくような気がしてますけど。