ふたりの娘。二匹のメス猫。そして発達障害気味の夫。帆の街での「ごく普通の家族」のごく普通の一日はきょうもボチボチと暮れていきます。

The Help

 話題の映画『The Help』を観てきました。




 原作はニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーズで、著者のキャサリン・ストケットさんはこれが処女作だそうな。いいなぁ、すごいなぁ、才能のある人は。



             The Help. Movie Tie-In



 見始めてすぐに感じたのは「英語が聞き取れない!」というあせり。ニュージーランドに暮らしていると耳に入ってくる英語の大部分はイギリス英語(風)です。(ニュージーランド英語とイギリス英語は全く別物でありますが)。あまり耳になじみのないアメリカ英語の上に、この映画の登場人物の多くは黒人。黒人英語はさらになじみがない。というわけで、かなりの部分、理解できてません、白状しちゃうと。映像と雰囲気でなんとか全体像をつかんだ……つもりですが。





 さて、映画は1960年代初頭のアメリカ南部の町ジャクソンが舞台。





 裕福な白人女性は家事や子供の世話をすべて黒人のメイドにまかせて、友人たちとのブリッジ(トランプゲーム)やら慈善事業と称してのパーティやらのソーシャルライフに忙しい。





 ほんの50年ほど前の話、奴隷制度などとっくの昔に廃止されている時代なのに、白人と黒人の差別が当たり前のように残っている、まずそのことにびっくりした。またしても自分の無知を映画によって知らされた、というところであります。




 「衛生上の理由から、黒人メイドには雇い先の白人家庭のトイレを使わせないようにしましょう」などと当たり前の顔で提案する高校時代の友人に違和感を感じる白人女性スキーターと、二人の黒人メイドとの友情の物語。




 黒人メイドのミニーにつらく当たるスキーターの友人ヒリーはホントに意地悪なんだけど、あれは当時の白人女性の典型なんだろうな。小さい頃からそういうふに育てられて、白人と黒人とは別の生き物と考える社会に暮らす人たちにとっての「常識」を体現しているにすぎないのだと。




 スキーターはミニーやミニーの友人エイブリンたちの協力で「the help」と総称される黒人メイドたちへのインタビューをまとめた本を出版するけれど、そしてそれはジャクソンの町にちょっとした嵐を巻き起こすけれど、




           それで、どうなるの?



      とわたしは思ってしまった。




 公民権運動の時代ではあるけれど、スキーターの本をきっかけにジャクソンの町に大きな運動がおこるという展開でもなく、





 スキーターはライターになりたいという夢に一歩近づくけれど、ミニーやエイブリンの暮らしにはなんの変化も訪れない(スキーターはこの本がきっかけで恋人にふられてしまうし)。




 
 でも、ちょっと調べてみたら、ケネディ大統領の暗殺の年(この映画の舞台となった年)の翌年、1964年に公民権法が制定され、法の上での黒人差別が終わりを告げたのだそうです。




 映画のラストシーン、長い道をトボトボと歩くエイブリンのモノローグで「わたしたちの権利が認められる日がいつかくる」と言っていたように思うのですが(よく聞き取れなかったのよぉ〜)、それはこのことを示唆していたのかなぁ?




 ところで、シシー・スペイセクという女優さんがヒリーの母親役で出ていました。




 アル中+ボケ老人という感じの母親なのですが、ミニーに手ひどい仕返しを受けたわが娘を笑い飛ばしたり、チクリと嫌みを言ったり、なかなかいい味出してました。





 この人はこの映画と同じ公民権運動を扱った『ロング・ウォーク・ホーム』で黒人メイドに協力する白人女性の役をやった人です。





 ヒリーの母親は積極的に黒人側に立つ人ではないのだけれど、何十年か昔になにかきっかけがあったらこの人がスキーターになっていたのかもしれないなぁ、などと。そんな風に深読みすると楽しい配役でした。