ふたりの娘。二匹のメス猫。そして発達障害気味の夫。帆の街での「ごく普通の家族」のごく普通の一日はきょうもボチボチと暮れていきます。

次女、巣立つ その2

入寮の手続きは午前9時から始まるということでしたが

どのくらいの混み具合になるか分からないから

早めに行ったほうがいいと思う

という次女の賢い判断で

 

 

9時少し前にキャンパスに到着すると

事務手続きを行うオフィス前の駐車場には

すでに2、30人ほどの学生とその家族が集まっていました。

 

 

9時ちょうどに窓口が開き、

あっという間に手続きをする学生たちの行列ができたのですが

事情がよく呑み込めていなかったわたしは

列に並んで待つなんて嫌だなぁ

少し待っていれば、この行列もなくなるかもしれない

などとのんきなことを言っていたのですが

 

 

ここでも、次女が「並んでおいたほうがいい」と賢く判断

 

 

数メートルの長さになっていた列の最後尾につきました。

 

 

まったく、賢い判断ができる娘で助かったわ。

 

 

20分ほど待って、次女の番になり

担当の女性職員に名前を告げると

コンピュータ画面を確認した彼女、

 

 

×××ドルの入寮費用が未払いなので

寮の部屋の鍵を渡すことはできません

 

 

え?

寮の費用?

未払い?

 

 

××日にそちらに送った請求書の支払い期限が××日でしたが

まだ入金されていません。

 

 

     なんですと~?!

 

 

我が家のお財布はJBが握っております。

送られてきた請求書を、JBが見落としていたのか?

 

 

いや、いや

 

 

JBは

自分が言ったこと、ひとから聞いたことを

片端から忘れてしまうという症状のある病気で

「知らない、聞いていない」(実は忘れている)

と、ゴタゴタもめごとが起こるのは日常茶飯事なのですが

 

 

なぜかお金に関しては

驚くほど小さな金額でも、驚くほどの正確さとクリアさで記憶する人です。

 

 

そのJBがきっぱりと、請求書はもらっていない! と断言。

 

 

実は

Massey Universityは最近

様々な事務手続きに関するシステムをアップデートしたらしいのですが

あちこちに不具合が発生し、学生たちの間にいろいろとトラブルが起こっているようで

全国ニュースでもその問題が取り上げられたそうです。

 

 

なので、JBが「請求書をもらっていない」と言うと

担当の女性の顔は「あ、やだ~、またぁ~?」という感じになり

JBとの間で「確かに送った」、「いや、もらっていない」

といった押し問答にならなかったのは助かりました。

 

 

が、それでも、支払うべき費用が未払いなのは確かであり

入金が確認できるまでは鍵を渡せないというのは変わらないようです。

 

 

しかし、

はっきりとした金額は明かせませんが、

財布からお札を2、3枚引っ張り出せば済むという額ではありませんで

その上、日曜日で銀行はお休みであります。

 

 

こういうとき、わたしにできるのは

青い顔をしている次女をとりあえず部屋の隅のソファに座らせ

大丈夫、なんとかなるよ

と肩を抱くくらいのことです。

 

 

一方、

「こんなことをしたら相手が気を悪くするだろうな、嫌がるだろうな」

という気遣いがまったくできないJBは大活躍をしてくれます。

 

 

窓口のカウンターを回ってずかずかと奥のオフィスに入って行き

職員たちの戸惑い顔にはまったく気づかず

大学のコンピュータを借りると、オンラインで銀行振り込みの手続きを始めました。

 

 

そんな父親の様子に次女はますます小さく縮こまっていきますが

わたしは、JBの様子に、よし、これで大丈夫、と確信しました。

(伊達に25年も一緒に暮らしていませんて)

 

 

次女にしてみれば、この上もなく恥ずかしい経験だったでしょうが

JBが周囲の空気や雰囲気をまったく読まないおかげで

30分ほどで支払い手続きが完了

めでたく次女は鍵を受け取ることができました。

 

 

ほぉーっと胸をなでおろしながら外に出てみると

先ほどは数メートルほどだった順番待ちの行列は

オフィス前の駐車場からさらにその先の道路へと続き

100メートル近い長さになっていました。

 

 

オフィスが閉まる5時までに行けばいいとのんびり構えていたら、

この長い行列に並ぶことになり

何時間も待った挙句に「未払いなので鍵は渡せません」と言われていたわけで

 

 

次女の賢い判断に救われたのでした。

 

 

え? ちょっと違う?