イギリス旅行記 その6 ~マジかよ、と次女つぶやく~
赤い車に乗って駆け付けた管理人さんは
40代半ばでしょうか、「元気はつらつ」を絵で描いたような人
「ごめんなさいね~、面倒かけて」と謝るわたしに
「No problem! すぐに解決するから!」と
明るく言って、JBが待つ裏口へと走っていきました。
……が
10分待っても、20分待っても、30分待っても
ドアが開く様子はありません。
どうしたのかと訝っていると
げっそりした顔つきのJBがやって来て
「彼女、表のドアの合いかぎ、持ってないんだって」
ゲ?
「で、台所の窓ガラスを割るって言うんだよ。
さすがに、それはって止めたんだけど……
どうしてもやるって……」
ゲゲゲ?!
まさか、本気じゃないよね、と思っているうちに
裏庭のほうからガシャーンとガラスが割れる音……
マジかよ……
わたしの隣でぼそりと次女がつぶやきます。
結論から言いますと
その直後にわたしたちは無事、コテージの中に入ることができました。
でもそれは、管理人さんの窓ガラスを割るという大英断のおかげではなく
JBがどこかから手ごろなネジ回しを調達してきて
それでカギ穴に内側から差し込まれたままだったカギを
外から押し出すことに成功したから
管理人さんが一大決心をして割ってくれた窓は
20センチ四方の小さなもので、しかも
そこから手を入れても窓のカギまではとうてい届かない位置
管理人さんが何故、あの窓を割ろうと考えたのかは、今もって謎
一方のJBは、自分のおかげで問題が解決したと鼻高々
「ね、僕ってハンサムなだけじゃないでしょ?」
ですと。
この騒動の大きな原因のひとつを作ったのは誰かを忘れてます。
川沿いの村で涼しい朝を過ごすはずだった一日
太陽はすでに頭上近くまで昇っていました。