金曜日に観た映画のこと
先週の金曜日の夜に友だちと映画を観に行きました。"The Last Station"という、トルストイの晩年を描いた映画です。
観始めてまず思ったのは「しまった、予習してくれば良かった」ということ。私がトルストイについて知っているのは『戦争と平和』の著者だということくらい。その『戦争と平和』だって読んだことがありません(ずっと昔にトライしたものの途中で挫折した記憶が……)。トルストイが伯爵だったことも彼を中心とした政治的なムーブメントが当時のロシアで起こっていたことも全く知りませんでした。
私有財産に否定的なトルストイは先祖から受け継いだ土地や自分の作品の著作権などの一切の財産を自分の死後は国に寄付しようとして、それに反対する妻と対立します。妻のソフィアは悪妻だったと言われているようですが、後に残される子供たちのために財産を残してほしいと思うのは母としては当然ではないかと思ったりします。むしろ、ソフィアを欺き、出し抜いてトルストイに遺書にサインをさせようとする弟子のほうが悪人に思えたりして。
ソフィア役のヘレン・ミレンが凛としてとても美しい。ソフィアに感情移入してしまったせいか、トルストイそのものはあまり魅力的に描かれていないような気がしました。トルストイを崇拝する周りの人々に奔走され、振り回されてしまっただけの「しょうもない爺さん」みたいな。コミューンの人々や支持者にとってトルストイは神に近い存在だったようなのですが。
映画の最後に「後にロシア議会がトルストイの著作権をソフィアに返還した」という説明が出て、なんだかホッとしてしまったのでした。